日本のカジノ法案まとめ!IR構想はこうやって進んできた【2021年】

カジノが出来るまでにはどんな問題をクリアしていくのか?

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2016年12月15日、衆議院本会議において『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)』が成立しました。いわゆる『カジノ法案』と呼ばれ、ニュースなどでも『IR誘致』などで報じられることで皆さんも聞いたことがあるかと思います。
この法案が成立したことで、日本でもカジノを作ることができるようになりました。

そもそもどんな法案なの?

『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(IR推進法)』に関しては、以下のように定めています。

まずなぜこんな法律が必要なのか?政府が定める「目的」を見てみましょう。


(目的)
第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。
(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律より引用)

要約すると、地域の観光や経済的に良い効果をもたらすようにこの法律を作り、カジノを作ることを許しますということです。海外からの観光客を呼び込んで、地域経済が活性化するようにカジノを作りましょうというものです。

さらに、基本理念を見てみると…。

(基本理念)
第三条 特定複合観光施設区域の整備の推進は、地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与するとともに、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとする。
(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律より引用)

要約すると、IRを推進する自治体はしっかりと管理をして、さらに国でも監理をしていきますというものです。単なるギャンブルができるカジノを箱物として作るわけではなく、しっかりと管理体制を整えた上で設置する必要があるということです。

公営ギャンブルの競馬や競輪、またパチンコとの違いは?

こうなると、日本で許されているギャンブルであるパチンコ(直接的な換金は許されていませんが…)や競馬、競輪と何が違うのか?

まずパチンコとの違いは国の管理下にしっかりと置かれるということ、また観光客を誘致することが主な目的だということです。これらが一般市民の娯楽として親しまれるパチンコとの大きな違いとなります。

では、競馬や競輪などの公営ギャンブルとの違いは何でしょうか?国や自治体が管理に関わるという部分では似ているのですが、カジノ単体での開設ではなく『統合型リゾート(IR)』として、ホテルや国際展示場などのMICE施設、映画館や劇場、アミューズメントパークやレストランなどを統合をする必要があります。そこが、競馬や競輪などとの大きな違いとなります。

どこの自治体がカジノを作る?撤退した地域と推進する地域

では、実際にどこの地域にカジノが出来るのか?現在誘致に積極的な自治体は『大阪府・市』『長崎県』『和歌山県』となります。

【長崎県】(推進派)

佐世保市のハウステンボスへの誘致を目指していて、運営事業予定者に『カジノオーストリアインターナショナルジャパン(CAIJ)』を選定しています。(九州・長崎IR 基本構想(概要)

【和歌山県】(推進派)

運営事業予定者に『クレアベスト・グループ』を選定する方向で協議を進めています。(和歌山県IR基本構想(改訂版)

【大阪府・市】(推進派)

『オリックス』と『米MGMリゾーツ・インターナショナル』の共同グループを運営事業予定者に決定したと日本経済新聞が報じたばかりで、協議を進めていると思われます。( 大阪IR基本構想

さらに、誘致に関して表明はしながらも現状では運営事業予定者の選定などを行わず、保留を続けているのが『愛知県』と『東京』です。愛知は名古屋、常滑で、東京はお台場で構想が立ち上がりましたが、議論は進んでいません。

また、誘致の表明をしながらも撤退したのが、『北海道』『千葉県』『神奈川県(横浜市)』です。

北海道【撤退】

候補地付近に希少な動植物があることなどの環境問題を解決できなく断念。また、道議会でも賛否の意見をまとめることができずに、誘致を推進することができなくなりました。(北海道IR関連ページ

千葉県【撤退】

幕張新都心でのIR誘致を目指していましたが、2020年に撤退を表明。この頃の千葉では台風や豪雨被害など大規模な災害が起きていたこともあり、復興を優先することでIR誘致は断念となりました。(千葉県IR関連ページ)

横浜市【撤退】

IR誘致に反対を表明して横浜市長選を戦った山中竹春氏が当選をしたことで、公約通りに撤退を発表しました。ギャンブル依存症などカジノによる負のイメージが先行して、地域のイメージ悪化を心配した住民が多かったことで反対派の山中市長に支持が集まりました。(横浜市IR関連ページ

現在は、西日本の自治体ばかりがIR誘致に積極的な状況です。偏りが出てしまうことから東日本の自治体の誘致が期待され、本命視されていた横浜市に変わり東京都の動きに注目が集まっています。

横浜市のIR誘致撤回でお台場への誘致が期待される

特に撤退で話題となったのが横浜市です。横浜市は、2019年に当時の横浜市長だった林文子市長を中心にIRの構想案を募集しました。羽田空港や成田空港からもアクセスが良く、また中華街やみなとみらいなど有名観光地がある土地への誘致となっただけに、多くの企業がIR参入を目指していました。

しかし、『ハマのドン』として週刊誌に取り上げられる事が多い横浜港ハーバーリゾート協会の藤木幸夫会長がIR誘致に反対を表明。

横浜市では昔からの有力者である藤木氏の意向もあり、横浜では反対運動が起こり始めます。

また、横浜市民からも『カジノ』というギャンブル施設ができることに反対する声が出始めました。2020年11月には「カジノの是非を決める横浜市民の会」が、市の独断でIR誘致が進むことに反対して、『誘致の賛否を問う住民投票条例の制定』を求めた署名を集計し、多くの賛同者を集めました。

そして迎えた市長選挙では、IR誘致に反対を表明していた山中竹春氏が圧勝する結果となりました。

横浜商工会議所などはIR誘致を推進する立場で、山中市長と協議を進めましたが新市長の意志は固く撤回が覆ることはありませんでした。

結果として、2021年10月1日をもって、横浜市のIR推進室を廃止すると正式に発表されたことで、横浜にIRを誘致しないことが決定しました。

この決定により、日本経済の中心地である関東への誘致先がなくなり、東京都によるお台場へのIR誘致が期待されることになったのです。

横浜市の撤退でマイナスイメージ、カジノのメリット・デメリットは?

これだけ誘致に対して、撤退する自治体が多く出ているのは、メリットだけでなくデメリットが大きく取り上げられることが多いからです。では、カジノを日本で開いた時に、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

カジノを含むIR構想を進めることで生まれる大きなメリットは、ズバリ『お金』です。

日本のIR構想の元祖は、1999年までさかのぼります。その当時、東京都の石原慎太郎知事が「お台場へのカジノ誘致」を唱え、これに賛同した自民党の議員などがIR構想を広げていきました。

その理念は『雇用や文化、財源の確保』にあり、少子高齢化していく日本の未来を考え観光客の誘致などが見込めるカジノが最適だと説明しました。

新型コロナウイルスが流行する前は、中国人の『爆買い』が流行語になったほどに、アジアを中心とした外国人が消費を支える兆しを見せました。

また、魅力的な観光地が多い日本において、カジノで外国人観光客を呼ぶことは日本全体の経済効果も見込める計算を政治家はしています。停滞する日本経済を復活させるためにも、カジノは大きな役目を果たすことになります。

デメリットな部分としては、ギャンブル依存症があげられます。

しかし、現状でもパチンコなどでギャンブル依存症は問題視されていて、カジノだけが悪者にされることを疑問視する声もあります。

また、各自治体や事業者はギャンブル依存症に関して入場制限やカウンセリングの設置など、国に提出する提案書に盛り込む予定となっています。加えて、国によって「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立され、カジノだけではなく全てのギャンブルに対して依存症を問題視する動きを始めています。

また、治安の悪化や国際的なマネーロンダリングも問題視されますが、国の管理下に置かれるカジノなだけに、政府がしっかりと体制を整える必要が重要となってきます。

実際にいつまでにカジノは出来るの?

では、実際にどういったスケジュールで今後はカジノを自治体が作っていくのでしょうか?まず、国はIRを設置する自治体は3ヶ所を予定していると発表しています。

どの自治体もIR誘致のスケジュールとして2022年4月までにIR事業者の決定、整備計画を国に申請をします。それに伴い、2022年5月頃から国が選定作業に入り、最大で3箇所の設置場所を決定します。

その後に、2020年後半を目安に速やかに自治体が順次カジノを開業していく流れとなります。早ければ10年以内には、日本のどこかでカジノがオープンしていることになります。

カジノが日本経済を復興させる

ここまで、日本でカジノが出来る流れを再度確認してきました。

来年にはどこの自治体がIR誘致に成功したか判明します。

横浜市の例をとっても分かる通りに、さまざまな問題を抱えているIR構想。しかし、日本の経済を復興させる手段としては、現状では最も有効な手段であることも事実です。

我々の生活にも大きく影響がある国家事業であるだけに、しっかりと動向を注視していく必要があります。