いろいろあった横浜IR誘致をもう一度振り返る

二転三転した横浜のカジノ構想は反対派の勝利で幕

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横浜市の山中竹春市長の『誘致撤回宣言』などで、まるで悪いことをしているようなイメージとなってしまった、統合型リゾート施設(IR)構想。カジノはギャンブルだから『悪』という結論ありきで話が進んでしまっているが、そもそもなぜ横浜市の誘致はここまで揉めたのか?

事の発端は2019年に当時の横浜市長だった林文子市長を中心に、IRの構想案を募集したことから始まる。カジノ運営などを行ったことがある7つの事業者から申し込みがあるほど注目をされていました。横浜という、羽田空港や成田空港からもアクセスが良く、また観光地として世界的に有名な場所での誘致となっただけに、多くの企業がIR参入を目指していました。

しかし風向きが変わったのは新聞でもテレビでもなく週刊誌報道でした。

『ハマのドン』として週刊文春や週刊新潮に取り上げられた、横浜港ハーバーリゾート協会の藤木幸夫会長がIR誘致に反対だと表明したからです。この週刊誌報道から、徐々に新聞などのメディアも巻き込んで、横浜では反対運動が起こり始めます。この藤木会長は横浜の湾岸地帯に影響力がある人物で、今回の横浜が計画をしていたIR誘致の候補地だった山下ふ頭にも深く関係していました。菅義偉首相とも蜜月の関係と言われるほどの実力者の藤木氏が『カジノはダメ』と言ったことで徐々に雲行きが怪しくなってきました。

市民からも反対の声が出始めた

また横浜市民からも、『カジノ』というギャンブル施設ができることに反対する声が出始めました。

市民団体などを中心として、治安の悪化やギャンブル依存症患者が増えることなどを理由に反対運動を加速化していきました。

2020年11月には「カジノの是非を決める横浜市民の会」が、市の独断でIR誘致が進むことに反対をして、『誘致の賛否を問う住民投票条例の制定』を求めた署名を集計しました。その数は約20万6千人分という条例制定の請求に必要な人数の3倍も集まる結果となり、改めて市民からは『カジノはいらない』という声が大きいことを印象づけました。

業者の選定は最終段階までいっていたが…

こういった反対の声がありながらも、横浜市はIR誘致を半ば強行的に進めてきました。

というのも、IR誘致に関しては期限が決められていて、自治体はパートナーとなる運営事業者を速やかに選定して提案内容をまとめ、2021年10月から2022年4月までの間に国へ申請をしないといけないからです。

横浜市は2021年に入って事業者の2社が審査を通過したと発表しました。その2社は公式には公開されませんでしたが、「ゲンティン・シンガポール」(シンガポール)と「メルコリゾーツ&エンターテインメント」(香港)だと言われています。それぞれが、上記2社を主幹事として複数社でつくるグループでの応募となっていて、その中にはセガサミーホールディングスも含まれていました。

IR誘致を進めていたが市長選で全てが水の泡に

さらに横浜市は今回の市長選挙直前までIR誘致を積極的に進めていて、2021年7月には市役所2階で事業者による模型やイメージ図などの展示を行っていました。こういった取り組みで、少しでも市民に理解を得ようとしていたんです。

しかし、市長選挙の結果は山中竹春氏が圧勝する結果となり、IR誘致推進派の林文子氏が大敗する結果となりました。横浜商工会議所を中心とする経済界はIR誘致推進派が多く林氏の支援に回っていましたが、市民からは『IR誘致反対』を突きつけられたのです。

商工会議所などからは誘致推進の要望も

山中市長が誕生してから、横浜商工会議所はIR誘致を推進するように要請する書類を横浜市に提出するなど最後までバタバタだった横浜市のIR構想。2021年10月1日をもって、横浜市のIR推進室を廃止すると正式に発表されたことで、横浜にIRを誘致しないことが決定しました。今後、大阪府・市や長崎県などがIR誘致に向け積極的に活動をしていますが、横浜市の影響を受けることはあるのか?注目が集まるところです。